被災地の文化を守り、器に宿る物語をつなぐ

2024年1月に発生した能登半島地震により、石川県七尾市の老舗料理店『一本杉 川嶋』は甚大な被害を受けました。 築92年の有形文化財である店舗は解体を余儀なくされ、数百点におよぶ器も損傷しました。
地域に根ざした食文化の象徴であり、魯山人や永樂の作品も使われていた器の喪失は、計り知れないものでしたが、 店主・川嶋氏は地域の炊き出しに協力するなど料理を通じて地域を支え続けました。
箔一が選んだ「文化支援」のカタチ ― 金継ぎで器を救う

2024年12月、川嶋さんから箔一へ届けられた破損器は段ボール5箱におよびました。 辰年の正月に使いたかった器や、思い入れのある名品も含まれていました。
「器は出会いそのもの。もう二度と手に入らない」―― その言葉に、器への深い敬意と愛情が込められています。
箔一では文化財修復にも携わる職人が、一つずつ丁寧に金継ぎを施し、 ただ修理するのではなく、新たな物語を器に刻んでいます。
器の復活がもたらす再建への希望

箔一での修復作業は2025年10月に完成予定。 蘇った器は再び料理と共に食卓へ戻り、その背景にある物語を来訪者に伝えていくでしょう。
『一本杉 川嶋』の店舗再建は2027年を目標に進んでいます。 箔一はこの支援を出発点に、職人や作り手と共に地域文化の再興を目指しています。
支援を超えて「文化をつなぐ」取り組みへ
このプロジェクトは、物理的な修復にとどまらず、心の復興をも含む“文化支援”の象徴です。 器に宿る歴史や記憶をつなぎ、新たな価値として次世代に届ける――それが箔一の志です。
- 義援金に代わる文化的な支援の形
- 職人技を活かした復興の試み
- 「使えるものを使い続ける」ことによる地域の精神の再生
「器に宿る物語を、新しいストーリーとして紡いでいく」――
金継ぎは、モノを直すだけでなく、人の心や地域の文化をつなぐ架け橋です。
一つひとつの器が再び輝きを取り戻すとき、能登半島地震の復興の一助になることを期待しています。